「ふ………」

 テレビの声に混じって、キス一つで出した自分の声に驚きは隠せなかった。


 ナルトの唇は柔らかくて、しばらくは啄ばむように合わせていたが、時間が経つにつれて舌が口内に入ってくる。

 久しぶりの男の人とのそれに、なすがままにされてしまえば。

 自由に動き回り、あたしの舌さえも絡め取る。


 鼻にかかる喘ぎ声。声が我慢できなくなるほど、濃厚なキスに。






 ……ナニも、考えられなくなっていた。











狭間での出会い

5
















 あたしは、ナルトが初めての男性じゃなかった。

 けれども、エッチは久しぶりで、どうして良いのか分からず。Tシャツの上から、胸を触られると、逃げ出したい衝動に駆られた。


「……っ……」
「もう立ってる。ココ」

 指の腹で服越しに触れられた乳首は、もう立ち上がった状態だった。不覚にも、キスだけで濡れたんだって自分でも分かっているほどであれば、当然の反応だろう。

「脱いでくれよ。全部」
「え!? 明かりは? テレビも消さないと……」
「明かりついてないと見えないってばよ? それに、テレビは付けとく。声や音を消してくれっからな」
「…………………………」

 もっともだと思いつつも、羞恥にどうしようもなくなっているあたしには、まさに地獄。脱ぐ決心もつかずにまごついていると、ナルトが素早くあたしの着ていたTシャツに手をかけた。


「時間切れ」

 ばっと脱がされ、ズボンにも手をかけられる。折角の折り目も解かれ、紐を緩められてしまえば、するりと簡単に全裸になった。

 あたしの服を脱がし終えると、ナルトも自分の服に手をかける。Tシャツを脱いでから、あたしをゆっくりと押し倒した。


 またしても目に入る封印式。

 これが……ナルトに辛い時代をもたらした九尾のもの。



 ……彼は、生きる英雄なのに。



「どうしたんだってばよ?」
「ううん……なんでもない」
「ああ、もしかして腹のコレ? 気になる?」
「別にならないよ。こんなもの、あってもなくてもナルトはナルトでしょ?」


 ナルトはあたしの言葉に目を細めただけで、そっとあたしの身体に触れた。


 ヤバイ。どうしよう。あれ、エッチってどうしてたっけ?

 抱き合うことに慣れていないあたしは、ただナルトを見上げることしか出来なかった。


「緊張してんの?」
「わ、悪い!?」
「声、裏返ってるし。あんた、25歳だろ? それなりに経験豊富なんじゃないの?」

 言いながら、本格的に両胸をもみしだく。時折指先が頂に触れる度、無意識に腰がうずく。

「悪かったわ……ね。残念ながら数えるほどしかありません。だから……」
「だから、ナニ?」
「あたし……あまりナルトを喜ばせてあげること、出来ないかもしれない」


 正直、エッチな小説やマンガは読むけれど、実際に自分がするのは好きじゃない。付き合った人間の数は少なく、経験なんてもの、ないに等しかった。


「……そんなこと、が心配することじゃないってばよ」

 あたしの胸に顔を寄せ、おもむろにナルトが舌で突起を舐め上げる。

「!? や……あ」

 ちゅ、という音が聞こえ始め、全身に甘い痺れが駆け巡る。






 ……慣れてる。そんな気がした。

 きっと、それだけの経験をしてきたんだろう。



 いくら九尾を抱えてるとはいえ、正直ナルトは格好良い。年齢も年頃だし、忍という職業柄、精神的な成長も早かっただろう。

 だからこそ、きっと女性を覚えたのも早かっただろうし。



 あ。なんか気分、落ちてきた。




「え? あ、や………」
「何考えてんだってばよ?」

 頂を口に含んだまま喋るナルト。唇が動く度、足先にまで快感が走り抜けていく。

「や、だぁ……」
「目の前に俺がいんのに、違うこと考えてるなんて余裕だな」
「ち、ちが……ふあっ」

 金糸に指を絡め、引き剥がそうとはしてみても、ピクリとも動かなくて。その間に、吸ったり啄ばんだりと、絶えず刺激してきて。

「はあっ……あ、く……」

 気持ち良い。ヤバイ。あたし……感じてる。


「イイ?」
「なんで、そんなこと……ん、聞くの?」
「気持ちよくなきゃ、やめようかなってさ」
「……え、や、やだあ……」


 肌の上を滑る熱が、だんだんと下へ降りてくる。触らなくても、すでにグショグショになってるそこへと近づいてくる。


「なあ、どう?」
「ふあ……!」
「言わなきゃ、やめちゃおうかなあ」

 言う間にも、右側は指先で、左側は舌を使って、敏感なところ攻められ、全身からは汗が吹き出していた。


 言葉で煽るナルトの表情は、それは楽しそうで。なんだか悔しい。一方的に優位に立たれていて。

 年齢の差もあることだし、ここはお姉さんらしくしたかったけれど……いかんせん、思考力を奪われ、なおかつどうして良いのかも分からなくて、喘ぐだけで精一杯。


 そんな中、両膝の間に身体を滑り込ませたナルトの空いていた手が、すでに濡れていたそこに到着した。


「うわ。もうグチョグチョじゃん」
「や、あ……!!」
「随分キレイだってばよ。本当に男を知らないんだなあ」

 ともすればするりと指先が入っていってしまいそうな入り口に到達し、ナルトが笑みを浮かべる。ナルトの表情が色っぽくてさらに欲情したからか、それとも与えられる快感に打ち震えているのか、ぞくりと肌が粟立つ。


「やらしーなあ。こんなにヨダレ垂らして」
「……ふ、あん……やあだ……」
「嫌? 嫌ならやめる?」
「………や……」
「やめて欲しい?」
「そんなこと…………」


 上下左右に、不規則に動く指先。中には入れず、その上。普段は隠れているはずの芽をこすられて、膝が震える。

「すげえ。大きくなってきた。イキそう?」

 ナルトの声が脳天まで走り抜けてきて、荒い息遣いがさらにあたしの感覚を刺激する。


 ……本当に、イキそうだった。


「ほら、答えろってばよ」
「!?」

 流れに身を任せようとしたところで、ふいに指先が離れる。ナルトを改めて見てみると、意地が悪そうに唇の端を上げて、あたしを見ていた。

「答えない罰」
「や、だ。やめないで……」 
「気持ちイイんだ?」

 ぐ、っと言葉に詰まって。でも、一度イキかけた身体が、さらなる高みを求めていて。あたしは顔に熱が上がってくるのを堪えて言った。

「……気持ちイイよ」
「どうして欲しい?」
「………………………………」
「じゃ、やめるってば?」
「……触って……」

 ああ、もう、なんでコイツこんなに性格悪いの!! 超恥ずかしいじゃん!!

 電気も煌々とついてるし、全部丸見えだし! 足を開いているのだって耐え切れないくらいなのに!


「最初からそう言えってばよ」


 ナルトは勝ち誇ったような笑みを浮かべながら、あたしの膝を持ち、さらに開かせてから、濡れそぼったそこに唇を寄せた。

「ナル……!? やあ……!!」

 指先が中に入ってきたと思った瞬間、それまで刺激を与えられていた芽を舐められ、一度引いたはずの波が全身を駆け巡る。出し入れされる指先と、舌先の絶え間ない攻撃から逃れようと自然に腰が浮いたが、ナルトにがっちりと押さえつけられ、ままならなかった。

「は、や……んん……ふああっ」

 何の内容を放送しているのかも分からないテレビの音はやけに遠く、自分の出す声とクチャクチャと響く卑猥な音がやけに気になって。

 シーツを握り締めて、容赦なく押し寄せてくる波に抵抗しようとしたが、無駄だった。簡単に押し上げられてしまった。


「イッちゃ……! っ、あああああっ!!」


 久しぶりの感覚に、頭が真っ白になり、身体ががくがくと震え出す。あまりに耐え切れなくなって、ナルトの髪に指を通して、その頭を抱き込むように起き上がってしまうと、ようやくナルトはあたしから口先を離してあたしを見上げ、微笑んだ。


「可愛い」
「はあ、はあっ。な、ナニ言って……」
「あー。俺、結構やべえってば」

 ナルトも座り直し、あたしと向き合う姿勢をとったところで。彼の言葉の意味を理解する。ズボン越しにでも分かるくらい、ナルトの男性自身が立ち上がっている。

 今更ながらなんだけど、見ていられなくて顔を背けると、ナルトが口元を拭いながら呟いた。


「お前、処女じゃねえの?」
「……へ?」
「俺の、このままじゃ入らねえかもしんねえ」


 ……処女? まさか。ちゃんと経験はある。

 でも……かなり久しぶりなことは事実で。だからそれほどきつくなってしまったのかもしれない。


「ならさないとな……」

 言いながら、あたしを再び押し倒して、さっきイッたばかりで過敏なそこにするりと1本だけ指を入れた。

「ふあっ……!」

 侵食される。それを心地よいと感じていて。2本に指が増えると何故か痛みを覚えたが、それもすぐに消える。

「あ、ああっ……ん……」

 処女ではないにしろ、やはりエッチなんかしていなかったせいかもしれない。指の挿入にさえ、身体が慣れない。


 そんな時。

 ふと、ナルトを見ると、額に汗をかくほど苦痛な表情であたしを見ているのが分かった。
 

 待ってくれているのだ。きっと。あたしの身体が慣れるまで。

 その優しさが愛しおしくなってしまったあたしは、ナルトを真っ直ぐ見上げた。


「……入れて」

 あたしの言葉に、ナルトが目を丸くする。

「え? あのなあ。ちゃんと慣らさねえと、痛いってばよ」
「それでもいいから……」
「良くねえよ」
「大丈夫」


 根拠なんて何もなかったが、そんな風に我慢してるナルトを見る方が辛くて。だったら、あたしが我慢した方が良い。


「ホントに大丈夫だから。ね?」

 ナルトは少し逡巡したように考え込んでから、自分のズボンに手をかけた。

 そうして現れた彼の武器に……あたしの身体を心配してくれた理由を知った。


 ……化け物か。大き過ぎるよ……。


 あれが自分に入るのか? と思うくらい、ナルト自身は長く、大きかった。あたしが見てきた数少ないそれなんて目じゃない。

 あたしがジッとナルトを見ていると、ナルトは困ったように笑った。

「マジでやべえ。優しくできないかもしんない」

 入り口にあてがい、先がゆっくりと入ってくる。質量と圧迫感に息がつまり、腰が逃げるが、ナルトが許してくれるはずがなくて。

「……かはっ…………!!」

 激痛に、身体が硬直する。さらに汗が吹き出てきて、眉を寄せながら目を閉じた。

「痛いかもしんねーケド、少しで良くなるから」
「う、うそぅ…」
の中、やっぱり狭え。キツ……」

 言いながらも、押し進んでくるのが分かる。


 目がチカチカするほどの火花が見える。抵抗する気も起きない。ただ、肩を抱かれてゆっくりとあたしの中に入ってくるその異物を受け入れるしかなくて。

 気持ち良いなんて感覚は一切なかった。痛い。唇を噛み締めても耐え難く、身体が引き裂かれるようだった。


「…………!!!」

 声にならない叫び声を上げて、浅く呼吸を繰り返す。永遠に続くかと思われる拷問に、意識が飛びそうになる。


「そうリキむなよ。力抜けって」
「……む、り、言わな……!」

 ナルトの声が耳元で聞こえる。その低い声にハッとしてナルトを見ると、苦痛に歪んだ表情は変わっていなかった。

「あー。入んねえ」
「…………………………っ」
「やっぱ無理か。仕方ねえよな」

 そう言って抜こうとしたナルトの身体に、あたしはあわてて手を回した。

?」
「………………動いて」
「え」
「いいから、動いて。あたしは大丈夫だから」
「大丈夫なわけ……」
「お願い」


 離したくなかった。

 自分が感じることの出来る唯一のぬくもりを、失いたくなかった。



 ……あたしは、卑怯だ。こうして側にいるナルトを、利用してる。

 寂しさを埋めるために、抱いてもらってる。


 こんなことをしたって、あたしの状況が変わるわけじゃないのに。このぬくもりを離してしまったら、一人になってしまうような気がして。


 いつだって一人だった。会社でも、友達の仲間内でも。あたしは、どこかしら一線を引いて、人付き合いなんて面倒だって思いながら過ごしてきた。今が楽しければそれで良いと。


 けれど、本当に一人じゃなかったんだ。


 電話やメールをすればつながる友達がいて、家族がいて。あたしは本当に一人だとは言えなかった。


 ……………でも、今。あたしは一人だ。








 だから……ナルトを利用した。







「……知らねーかんな」

 ゆっくりと、ナルトが動き出す。痛覚のみがあたしの全身を支配するが、耐える。時折、入り口だけで動いているナルト自身が奥まで入ってきて腰を引こうとしたが、ナルトはあたしの身体を押さえつけていて、ままならなかった。


「あああっ! はあっ! ……ひ……」

 何度脳天を揺さぶられて、どれくらいの時間そうしているのか分からなくなる頃。痛みが徐々に快感に変わってくる。身体がナルトを受け入れることに慣れていき、奥まで突きあがってくる感触を気持ち良いと感じるものに変わると。

「ふあっ……ああ……!!」
「もう大丈夫みたいだなあ」

 声が、色を帯びるのが分かった。歓喜に身体が震えるのを実感する。

「ナル……!」
「じゃ、そろそろ本気で」

 気遣うように動いていたナルトが変貌し、自分本位で滅茶苦茶に動いてくる。動きに変化をつけ、だた上下だけではなく、角度をずらしてあたしを犯す。

「あ……ひあっ……や、やあだああ!!」

 擦れる水の音が恥ずかしい。足をさらに持ち上げられて、勢いよく突かれてしまえば。最奥にまでに届くほどの衝撃。

「ふあああっ、変になるぅ……!!」

 もうナニも考えられない。どうなったって良い。ナルトがあたしの世界のすべてで、気を保っているのが精一杯のあたしは、ただ喘ぐしかなかった。



「………はあ、すげえ。なあ……お前、誰なんだよ?」


 こんな時に、ナニ言ってるの?

 うっすらと目を開けると、ナルトが汗を散らしてあたしをじっと見ていた。

「誰?」

 ……そんなの、知らない。あたしだって、あたしが分からないんだから。

「じゃあ何で、記憶喪失なくせに大蛇丸のことや、綱手のばあちゃんのこと、知ってんだってばよ? ばあちゃんのあの姿みて、初対面で『婆』だなんて分かるはずがねえし」

 記憶喪失は……半分ウソで、半分本当なの。だって、マンガやアニメで知ってたなんて言っても信じられないでしょう?

「へえ。アニメ? なんだってばよ。ソレ」

 え、アニメって、知らないの? こっちの世界にはないのかな?

「こっちの世界って?」

 ここが異世界だなんて言っても、どうせ誰も信じてくれないじゃない。そんなこと言ったら、それこそあたしが単なる夢を見ていただけだって……そんな世界あるはずないって言われるだろうし、『』だって決め付けられてしまう。あたしが『』だって決められてしまったら、本物のはどうなるの?

「異世界? お前ってば、本当に異世界から来たの?」

 あたしだって信じられないけど、そうみたい。だってここには車も飛行機もない。コンクリートの家もなかったし、何より……あたしの世界にはなかったチャクラが存在する。岸本先生って漫画家が描いてるマンガの中の世界が、そのまま具現化されてる。

「……『キシモト』? それが、そのマンガやアニメってやつを書いてる奴の名前か?」

 アニメは違うけれど、マンガはそうよ。だから、ナルトのことは知ってるもの。下忍になった時も、波の国での戦いも、初めての中忍選抜試験のことも、三代目の悲劇も。あたしは、ずっとマンガの中で、貴方を見ていた……。

「……だから知ってたんだ? 俺のこと。じゃあ、サスケのことも知ってるってば?」

 知ってるよ。あと、チームを組んでたサクラちゃんのことも、カカシ先生のことも。だから、あたしが18年間眠っていたであるはずがないの。でも、異世界から来たっていうのも真実味がないし……。


 どうしよう、ナルト。



 あたし……誰なの?

 一人は嫌……恐い……やだ……。

 ……助けて……。






!!!」
「…………へ?」

 あ、れ?

 気が付いたら、ナルトは中に入ったまま、不安げにあたしを見下ろしていた。意識が朦朧として、ぼうっとしていたらしく、その状況にあたしは瞬く。

「ナニ考えてんだってばよ? ほら」
「!?」

 ぐっと中へ押されて、擦れた声が漏れる。あまりにも気持ち良すぎて、意識を失いかけていたらしい。

「そんなに気持ち良いってばよ?」
「ち、ちが……」
「……………………………」

 ナルトは無言で、目じりに浮かんでいた涙を拭ってくれる。その時に初めて、自分が泣いていたことを知る。




 
 ……あれ? あたし、どうしたんだろう?




 ナルトとエッチしながら、何かぼうっとして……ああ、快感が強すぎて、飛んじゃったのかな?




「まだ終わってねえってばよ」

 なんて、ぐるぐる思考を巡らせていると、ナルトが再び動き出す。

「ひああっ!! やあっ」

 一旦引いていた熱が、再び全身に渡っていきながらも、ナルトの表情が冴えないのが気になって。

 それでも、自分のことで精一杯だったあたしは、最後に絶頂を迎えたと同時に、急速に意識を失っていった。





 エッチの最中の記憶が途切れていることは。

 ただ単に、気持ちよすぎて分からなくなったって認識しか、その時にはなかった。










 本当は、術をかけられていたなんて。

 あたしには、分からなかったのだから……。



























というわけで(苦笑)
駆け足に通り過ぎてしまいましたが、
物語のキーになるシーンになります。コレ。。




更新日時:2005.2.24
行間のみ改訂:2012.9.18







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