「もう、いいかな……」
「ああ。暗部の気配もない」
「あんな幻術使えるなんて、サスケ、どこで修行したんだってばよ?」
「サクラが使っていたのを一度見たことがあるんだ。その時、写輪眼でコピーした」
「ふーん。サクラちゃん、あーいう幻術使えるんだ」
「当然だろう。幻術で、サクラに敵う相手は里でも少ない」
「紅先生よりも?」
「……だろうな」


「うー、うー!!」
 あたしの耳元でボソボソと話す二人をに抗議の声を上げようとしたが、後ろからナルトに口元を手で抑え付けられているために言葉にならず、唸ることぐらいしか出来なかったあたし。


 そう。あたしたち3人は、木の上ではなく。根元に生えている茂みの中に座り込んで居た。


 ……つまり。

 暗部を幻術にかけ、あたしが死んだように見せかけたていたのだ。











忍としての道


後編










 実のところ。あたしはナルトに後ろから羽交い絞めにされた時。振りほどくような力は残ってはいなかった。

 薬のためだろうか。

 事実は、そのまま茂みの中に引きずり込まれ、彼と共に身を潜めたのだ。


 その時点でサスケの幻術は発動していて。この様子を見ていたらしい追い忍は、まんまと術中にはまったというわけだ。



 あたしは気が付かなかったのだけれど、この二人は少し前から、暗部が事を見守っていたことを察していたらしい。

 あたしを追ってきたのだと見当をつけて、一芝居打った。それが現実。



 しかし、彼らが何故あたしを生かしたのか、意図が分からない。




「うわ、こら、暴れんなってばよ!」

 一向に拘束を緩める気配のないナルトに噛み付く勢いで暴れるあたしを、難なく抑え付けるナルト。いくら暴れたところで、もう逃げることは出来ないのだと悟るには十分だった。 


 あたしのお腹に左腕を回したまま、口元を覆っていた反対側の手が離れると。


「……どういうつもり?」

 開放され、低く唸るような声で、目の前のサスケと後ろのナルトを睨み付けることしか、あたしは出来なかった。


 すると、サスケが溜息交じりに答える。

「どうもこうも、俺たちはお前を殺す気などない。ただ、その目的を探れと言われただけだからな」
「状況に応じて始末しろ、とは言われていたでしょ?」
「だから始末した」
「?」
「ここにいるお前は、もう砂の忍でも何ともない。は死んだんだ」
「……………………」


 ……確かに。


 あたしが死んだ、という事実は、砂の暗部の前で繰り広げられた。幻術が発動する前。サスケが実際にあたしの髪を切り、ナルトに渡して……ナルトはそれを暗部に渡した。

 追い忍である暗部が承認したとなれば。

 ここに居るあたしは、砂の上忍・じゃない。ただの抜け忍だ。しかも、死亡の確認された、どこにも生き場所のない忍。


「そうそう。これでじっくり尋問できるってばよ」

 あたしに抱きついたままのナルトが、至極楽しそうに笑う。耳に彼の吐息がかかり、ぞくりとしたが、指先に力を入れることも億劫なあたしは、話すことで精一杯。彼を振り切る力はない。

「……あの薬……何だったの?」

 二人に問うように呟いたあたしの言葉に。ナルトは楽しそうに笑い、サスケは激しく眉を寄せて怒りを露にした。

「そりゃ当然、自白剤。でも、ちょっとばかし改良してあるから、薬に慣らした忍でも、余程の耐性がなければバッチリ効くもんね〜」
「まあ、木の葉の新薬だからな。だが、効果が出てくるのに意外と時間がかかったな」
がそれだけスゴイ忍だからじゃないか? 正直、オレってばこんなところまで逃げられるなんて、予測してなかったし」


 町の中で捕まえるつもりだった、と無邪気な子供のように笑うナルトに、得体の知れない恐怖を感じる。


「ところで、いつまでソイツに抱きついてるつもりだ? ナルト」
「え〜。だって、イイ匂いがするんだってばよ」
「馬鹿が。敵の色香に迷う忍がドコにいる」
「ここに居るってばよ」
「フン。好きにしろ」
「それに……このままの方が、何かと都合が良いし」


 言いながら、器用に忍服の合間を縫ったナルトの右手が、鎖かたびらの間からあたしの素肌に触れるのに、さして時間はかからなかった。


「!!」
「さあて。じゃ、答えてもらうとしますか。は、何が目的で木の葉に来たんだってばよ?」

 するりとあたしの服の中に進入してきた手が、直接胸のふくらみに触れる。しかも腰を抑え付けていたはずの腕も、いつの間にか服の中へと入り込み、両胸を揉み上げていた。

「あっ……あたしは……」

 話すな。何を口に出す気だ。任務は極秘事項。ましてや敵なんかに話すもんじゃない!


 そうと分かっていても、勝手に言葉が出てくる。

「与えられた任務は……木の葉の戦力調査。どれくらいの忍がいるのかを把握するのが仕事だ」

 サスケがジッとあたしを見ている。その視線さえも陵辱的で、いやに興奮を煽る。

「それで、お前は何故俺たちに仕掛けてきた? 戦力調査が仕事なら、身を潜めているのが得策だろう?」
「それは……風影様が、お前たちを殺せと……やあっ」

 ふいに、ナルトの指先が突起に触れ、びくんと身体が跳ねた。それに苛付いたのか、サスケがあたしからナルトへと視線を移す。

「ウスラトンカチが。盛るな」
「盛るってヒドイってばよ……サスケだって、可愛いと思わない?」
「今は任務中だ。やるなら後にしろ」
「ふーんだ! サスケには触らせてやんないもんね!」

 そんな言い合いをしている間も、ナルトの手は止まらない。それでなくても思考力が低下しているっていうのに、この刺激は正直マズイ。

 しかし、そんなナルトのフザケ半分とも取れる言葉に、サスケは驚いた表情を見せた。

「お前……まさか、本気か?」
「……………え?」

 サスケの問いに、ナルトは答えない。だが、肯定するかのようにピタリと手の動きが止まる。あたしの位置からじゃ、ナルトの表情は見えなくて。でも表情を捉えたくて、顔を見上げた。

「……なるほどな。それで、お前が普段は絶対に使わない自白剤なんかを持ち出した訳か」
「サスケ、うるせえ」
「浮ついた噂の一つもないお前が……な」


 サスケの浮かべた勝ち誇ったような笑みに、ナルトが小さく舌打ちする。


「同盟国とはいえ、反乱を目論む国の忍だ。どうせ殺らなきゃならない。……分かっているのか?」
「少し黙れ。サスケ」

 ナルトから膨らむ殺気に、サスケは鼻で笑う。

「まあいい。……それで……今の話から察すると、お前は捨て駒にされたようだな」
「………そう、ね」
「今、砂が木の葉に戦争を仕掛ける気はないだろう。風影を巡る内乱も気になるしな。大方、アンタの任務は、任務と称して派遣した敵国で、始末するために作られた口実だろう。アンタほどの忍なら、そう簡単には殺れない。消すなら、失敗は許されない。失敗することはすなわち、自分の首を絞めることになるだろうからな」
「………………………………」
「それだけ情報が得られれば十分だ。ナルト。後は任せた。俺は先に戻る」

 言いたいことだけ言い放って、サスケの姿が掻き消えた。



 後には、静寂だけが残る。




 ナルトは、動かない。言葉も発しない。嫌な空気。




 この状態になってしまった時点で、あたしの負けだ。それに、ここで生き延びたって、砂の里に戻る気もなんだか無くなってしまったし。風影様があたしを消すために暗部を放った。それは事実だ。わざわざ里に戻らなくたって、その事実が答えなのだ。

 それに……風影様に、復讐しようだなんて気も起こらない。やはり、それまでの人だったのだと思うだけだ。




 これでは、砂の繁栄も望めない。

 あたしは、自分の手で里を変えようと思えるほど、里を愛しているわけでもなかったし、自分の力を過信しているわけじゃない。



「…………ナルト?」

 そんなことより。さっきから、黙ったままの彼の様子が妙に気になって。沈黙を破るように、あたしは彼に呼びかけた。

「…………………………」

 しかし、彼からの反応はなくて。どうしたもんかと溜息をついたその時。

「ったく、サスケのヤロー、余計なことをべらべらと……」

 小さく。微かにそんな声が聞こえた。


「え?」
「さっき、聞いたな。どっちが本当のオレなのかって」
「!?」
「教えてやるよ」
「……! あっ…!!」

 動きを止めていた手が、再び素肌を這う。しかも今度は、胸の先端をつままれ、そのまま左右に転がされる。

「やああっ、あふ……!!」
「気持ちいいだろ?」
「……そんなこと……!」
「へえ。そう」

 少し力を加えられただけで、痛みが走るほどなのに、快感に呑み込まれて痛みも気持ち良いと感じる自分が居る。

「イイだろ?」
「…………あっ、あっ…!!」
「ほら、どう?」
「気持ち……いいよぅ」

 自白剤が効いているせいか、正直に答えてしまう自分が情けない。が、ナルトの指先から与えられる刺激と、耳元で響く彼の恥羞を煽る声に、身体が興奮していく。

「どうしてほしい?」

 胸から離れた片腕が、ズボンへとかかる。乱暴に衣服の中へと突き進んだ手は、しかし確信を外れて内股を撫でるだけ。

「ほら?」

 胸を触られるだけでは物足りなくて。うずくそこに、早く触ってほしくて。

「お願いだから……触って……」
「どこに?」

 意地悪く笑う声。その声さえも、今はあたしの感情を高ぶらせていくものにしかならない。

「早くぅ……」

 自分でも驚くほどに、甘い声。

 ……もう、どうでも良かった。



「仕方ねえな。ほら」

 下着の合間から、指がいきなり確信へ触れる。上下左右に引っ掻き回され、身体が無意識に跳ねる。

「あんっ…! やあっ」
「嫌? 嫌ならやめるか?」
「や……だあ。やめないで…!!」
「やらしー。敵の忍の陵辱されて、喜んでんじゃん」
「あっ、あああっ!!」

 耳たぶを甘噛みされ、甲高い声が漏れたと同時に。

 指が、あたしの中へと入ってきた。

「いやあっ、ああっ……ふあ……!」

 親指の腹で芽を刺激され、指は激しく中と外を行ったりきたりする。イキそうになれば動きを止められ、その間も胸を揉みしだかれて、何が何だか分からなくなっていた。

「!? ……あふぅ、んっ!」
「グチョグチョ。ほら、聞こえる?」
「あ……ああっ……もう、入れて……」

 じらすだけじらされて、イケない苦しさに、口から飛び出た言葉。男を相手にする色の任務は経験が少ないながらも、自分を見失うなんてこと今までなかったのに。


 なんで、こんなに感じるの?

 薬のせい? それとも……。



「せっかちだな。夜はこれからだってのに」

 言いながら、あたしのズボンと下着を太ももまでずらすと、ナルトはあたしの身体を持ち上げ、そのまま後ろから入ってくる。


「ああああっ!!」
「うわ、キツ……!」
「動いちゃ、やあ……」

 あまりの圧迫感に呼吸が詰まる。けれど、するりと簡単に彼自身を受け止めてしまっていた。

「なんで? 咥えて離さないのに、それはねーだろ」
「あっ、んあ……! ふ、ああ……!!」

 ぐんと身体を揺さぶられて、激しく犯される。微妙に動きに変化をつけてあたしの中を動き回る彼に、翻弄されることしか出来なくて。

 生理的に流れた涙が、ぽたりと地面に落ちた。

「クス。イキそうだろ?」
「……っ、やあああっ! ダメええ!」

 最奥まで勢いよく突き上げられて、あたしは簡単に絶頂を迎えた。だが、収縮を繰り返すあたしの中を、ナルトは強引に割って入ってくる。

「やあっ! もう、やめてえ!」
「これくらいで済むと思うなよ」
「壊れ……!!」
「そんなのオレの知ったことかよ」

 繰り返されるピストン運動に、意識が飛びそうになったが、後ろから伸びてきた腕に強く乳首をつままれ、痛みによって現実に引き戻される。

「許してええ!」
「やだね」
「ああっ!! もう、いやあ……!!」

 程なく、二度目の波。しかし今度は、ナルトも同時だったらしく、小さく呻くとあたしの中へとその欲望の塊を吐き出していた。


 注ぎ込まれた精液の量が多く、下腹が膨れ上がる。胸に込み上がる不快感が、目の前を暗くした。



 ……気持ち、悪い……。



 受け切れなかった液が繋がった間から零れ落ちると。あたしは後ろへ……ナルトの胸へと倒れ込んでいた。


「はあ、はあっ……」
「もう降参? 忍のくせに、体力ないのな」
「苦し……」
「このまま終わりにはしねえから」

 ぐいっと顎を持たれて、強引に上を向かされると、そこに彼の顔があって。有無を言わさずに、唇を奪われる。

 強引に割って入ってくる深いキス。貪られるような、それでいて優しいキスに、収まりかけていた熱が、再び全身を駆け抜ける。

 汗で服が身体に張り付き、脱ぎたかった。それに、中途半端に脱がされている忍服の圧迫感が、苦しい。





 ナルトのことを。好きか、嫌いかなんて、正直分からない。お互い、どう想っているのかなんて、想像することさえも難しかった。



「覚悟しろよ」



 セックスに、愛とか、言葉とか。そんなものを求めたことなんてなかったけれど。





 ………あたしがもし、他国の忍でなかったら……と。


 想像し始めている自分を、認めるしかなかった。





















 気が付くと、あたしは住み込みで働いている宿の自室で寝ていた。

 いつの間に帰ってきたのか、心当たりがない。けれど、起きた瞬間、自分が忍服を着ていたことから、あの出来事が夢でもなく現実だったことを理解する。





 滅茶苦茶にされた心と身体に、唇を噛み締めた。





「いつまで寝てるんだい!」

 階下に住む、宿のおかみさんから怒鳴られて、あわてて服を着替える。その際、簡単に身体を拭いたけれど、身体に染み付いたナルトの匂いは落ちなかった。




「眩しい……」

 一歩外に出れば、快晴の青空。今日もよく晴れそうだった。


 恒例の仕事となっている水まきを行っていると、あたしの横にふいに影が落ちた。


さん!」

 いつものように。普段と変わらずに。

 声をかけてきたのは……うずまきナルト。後ろには、サスケの姿もある。

 こんな人の往来の最中に。あたしが身構えるのはどう見たって不自然だ。気を抜かないように注意しながら二人を見比べると、あたしの目の前で足を止めた二人は、昨日の朝までの様子と全く変わらなかった。



「おはよう……ございます」

「おはようだってばよ!」
「……ああ」

 
 何を企んでいる……?

 二人の意図が分からなかったが、人の目もあるため、平静を装う。


「昨夜は楽しかったってばよ! また一緒に飲みに行こう!」
「あ……はい。是非」

 感情など、こもってない声で返答すると、ナルトはいつもと変わらない満面の笑顔を浮かべた。

「じゃあ、またな!」
「じゃあな」


 決まり文句のようなセリフを残し、去っていく二人。

 あまりにも普通の行動に、呆れ返る。



 まさか、幻術にでもかかっていた?

 だが、昨夜の出来事は夢じゃないと確信できる。 



 ……思い出したくなくたって、身体が昨夜の行為を覚えていたから……。



 ナルトの声と。

 指先の動き。

 目を閉じれば、その一つ一つまでが浮かんでは消えて。





 これから、一体どうしたら良いのかなんて、分からなかった。



 ……どうにもできない。

 砂の忍としての道を、あたしは失ってしまったのだから。












 それからというもの。




 二人の忍は、その朝を最後に、あたしの前に現れることはなくなった。















 けれど、あたしはまだ……その宿場町で働いている。









 何かを、探して。


















始めの予定では、こんなに長くなるはずじゃなくて、
でも書き始めたらあれもこれもと欲張ってしまい、
結局、前・中・後に分けても中途半端な感じに……。

一応、続きも考えてはいるのですが、
ここで終わった方が物語的に綺麗かなあ?
何しろ、続編として思いついた話は、
単なる恋愛小説……。
別にナルトのドリームとしてやらなくても良いじゃん、って感じなので、
書こうかどうしようか迷ってます。。

リクエストが一件でもあれば、書きますが、
なければやめます(苦笑)
もし続きがみたい! と仰ってくださる方がいらっしゃったら、
掲示板かフォームデコード、またはメールにて、
「いいから書け!」とご連絡ください(笑)


2004.12.12追記

→ご要望をいただきましたので、
続編決定!

2005.7.30追記

「忍としての道2」の連載を始めました。

お楽しみください。






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